僕のミーをシロと呼ばないで

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 僕はどうしてもシロ様を拝みたくなった。それは憎々しい名前だからっていう何根性的なものもあるし、お騒がせシロ様にも興味がでた。僕は珍しくもう少しこの状況を観察しようと思ったのだ。  滝本ユリエが痺れを切らしたのかピリピリと表情を歪まている。その隣で彼女のマネージャーであろうメガネで長身細身な男性が機嫌をとる。そのイライラがここまで伝染してくるようだった。うん、いい感じでヤサグレているのがまた好みだと、僕はマジマジと観察した。周りの見学者もざわざわと騒ぎ始め、監督はまだ来ないのかと僕が数える限り3度目の問いかけを男性スタッフに投げかける。男性スタッフは投げかけられる度に、公園出入り口にいる中肉中背の男性に無言で「まだかッ!」っと合図を送り、それに答えるように出入り口の男性は首を振る。  シロ様、一体どんな大物なんだ。  僕は益々面白くなって会話を盗み聞きしようと、現場のギリギリのところまで近づいた。  準備万端で後はシロ様待ちのスタッフ二人が、手持ちぶたさを誤魔化すように会話をしていた。 「シロ様は、いつにもまして困ったもんだ」 「ああ、来るのも気まぐれ帰るのも気まぐれ。この間は、天下の美月真を3時間待たせ、さんざん振り回した挙句、シロ様ベスト演技で最高の映像が撮れた」 「...またかシロ様伝説」  とスタッフが首を振った。 「おい、知ってるか?」  一人のスタッフがもう一人のスタッフに耳打ちするように身体を傾けた。僕もそれを聞きたくて思わず同じように傾ける。 「シロ様、普通に計算しても長者番付でトップテンに入るらしいぞ」  これはとんだ大物だ!  僕は目を丸くした。
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