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あいつのご主人様は、僕じゃないんだ。
いや、僕はそうだと思ってるけどね。でも、あいつは僕を認めていないかもしれない。
「ミー」
僕は、縁側で寝ている白猫に話しかけた。名前はミー。ミーはにゃーっと鳴いてまた眠りにつく。何か聞こえてきたかナー?気のせいだったみたいだって、言わんばかりのあしらいよう。
あそこはさ、日当たりの悪い家の中で唯一温かい場所なんだよ。人間様である僕の、一番お気に入りの場所なんだ。そこを、さも、自分の場所のように悠々と我が物顔で陣取るんだ。
猫の癖に。
それだけじゃない。夕飯のお刺身だって、ちょこんとお膝の上にのっかってみゃーって鳴くだけで、簡単に手に入る。ただ、僕がミーにメロメロだっていう理由だけで。
ま、そんなことはどうでも良い。そんなミーが大好きだし、僕のテリトリーにすっと入り込んでくるところが堪らなく愛おしい。
もう、何でも許してあげよう。壁にガシガシっと爪を立てても目を瞑ろう。君の爪が僕の手に傷をつけても、可愛いねーっと言ってあげよう。
だけどね、一つだけ許せないことがある。
ミーには、どうも、僕の他にもう一人ご主人様がいるかもしれないということ。それだけは許せない。
もう一人のご主人様の存在。
それが確かだってことは、気付いている。何ていうんだろう、飼い主の勘?みたいな感じでわかっちゃうんだよ。こんなことって。
全くなんてヤツだ! ミーってヤツは!!
可愛い顔して、ババンバンだ!
2人の人間様の間を行き来しているなんて、自由猫にも程がある!僕は知ってるんだぞ、君が時々「シロ」って言葉に反応していること!
それにお店に並ぶ猫缶コーナー。あげたこともない猫缶パッケージ。えらくにゃーにゃー鳴いて訴えてているじゃなないか!誰に餌付けされちゃったんだい!全てまるっとお見通しだからな!
...さあ、白状してもらおうか。
「フフフ...」
ミーの隣に腰を下ろして僕は悪い顔で君をみても、直ぐに顔は緩んでしまった。だって、ミーは可愛すぎる。
僕はへんたいみたいにデレってなってしまって、シロも猫缶もどうでもよくなってくるんだ。しかし、ここは心を鬼にして問い詰めよう。
君は、誰に飼われているの?
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