9

1/1
前へ
/9ページ
次へ

9

 後日、甘いモンばっか食ってんじゃねーよ、と可愛げのない台詞と共に押し付けたコーヒーは、俺飲めねぇし……と一度は文句を言われたものの、最終的には「牛乳いっぱい入れてチョコと一緒に飲んだら凄ぇ良い感じだったぁ!」と好評だった。 「最後にコーヒー飲むさ、チョコが消えてコーヒーのが強くなるのに、甘―い味になってふわーって広がんのね」 「良い食レポすんじゃん」  照れよりも先にコーヒー好きとしての嬉しさが来て、言った通りだろ? とドヤ顔を隣に返す。けれど、さすがみっちー! と言って笑うかと思っていた顔は何故か、すっと耳元に寄せられた。 「やっぱり、みっちーって大胆だね」  照れに漂う少年らしさは昔を思い出させて、けれど囁いた声の低さと熱は青年になった今の彼のもので。  いつか引き返せると思っていた恋に、どぷんっ、と沈んだ音がした。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加