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 ……なのに、翌日は時間が経つにつれて変にドキドキして来て、苦しくて。  お昼寝の時間に薄暗い天井を見ていたら、もし渡す前に海斐くんが帰っちゃったらどうしよう、なんて不安が急に浮かんで一人で泣きそうになるくらいだった。  帰りの時間になり、忙しく動き回る先生達の目が離れたタイミングで鞄からチョコレートを取り出した時には、俺の緊張はピークに達していた。顔も体も物凄く熱かった事を今でも覚えている。  こんな手で持ったらチョコが溶けちゃう! と、おっかなびっくりラッピングの上の部分を摘んで、急いで彼の鞄の隙間へぎゅっと押し込む。恐る恐る振り返った先に、自分を咎める視線がない事を確かめると、緊張から解放された口がほうっと息を吐いた。  そして、出て行くはずだった体中に広がる熱が、じわぁっ、と胸に集まった時、それが恋だった事を自覚した。
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