私の家族と仲間

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私の家族と仲間

「それでね、ナナったらすっごく呆れた顔したのよ! ひどいと思わない!?」 「えっと……、同意した方がキャロルは喜ぶと思うのですが、その……」 「テオまでそんな事言うのぉ……」  移動中、私の行動は全て研究の対象である為、私にプライベートの会話は不可能だと気が付いた。  折角とても喜んでくれたのに。と、“残念”で私がその事を告げるとキャロルは、 「ちょうど良かった! 今、友達に愚痴をいっぱい聞いて欲しい気分なの!」 と言いってくれた。 「おや! 元気な声が聞こえると思ったら、珍しい子と一緒じゃないか」 「聞いてよー、ナナもテオもひどいのよぅ……」 「どうせお前が何かやらかしたんだろ」 「もぅ、違うったら!」  お邪魔するよ、と私の斜め向かいに座ったのはライアン。不機嫌そうな顔でその正面に座ったのがディーン。私は二人に「こんにちは」と挨拶をした。 「何でこいつがこんな所に居るんだ?」  ライアンの方は私に「こんにちはテオ」と返してくれたけれど、ディーンは私の挨拶を無視してキャロルに話しかける。  職員の中では私達をあくまで物として扱う人も多い。間違った対応ではない。でも、先生が「ディーンの仕事は好きだけど、テオに冷たいのはいただけないよね」と言っていたから、今のディーンの態度は良いものではないと判断する。 「あら、私とテオは友達だもの。楽しくお喋りするのに場所なんて関係ないわ」  ねぇ? と私に笑いかけてくれたキャロルも、きっと同じ気持ちだ。だから私は、自信を持って「はい」と答える事が出来た。 「ほんと、お前らの感覚は分からねぇよ。リアルに作って錯覚させんのが俺達の仕事だけど、内部処理なんて知ったこっちゃねぇ、っつー一般ユーザーじゃねぇだろ」 「私達が“ある”って信じてない物を提供するべきじゃないでしょ?」 「その通りさ。だから私も、担当したモデルが出荷される時は、我が子を送り出すような気持ちになるよ」 「は? お前もかよ」 「何故ライアンは、私達を『子』と認識しているのですか?」  丁度良い。自身が制作した物に対してそういった価値観を持つ人間が居る事は把握していたけれど、身近な人間に直接話を聞く事が出来る。それに、ライアンやディーンのように設計を担当している人達は感情の研究をしている人達に比べて、私達に人間性を見出し辛い傾向にある。 ライアンがそれに当て嵌まらない理由を知る事は、『家族』への理解を深める為にきっと必要だ。 「私の思いが詰まっているからさ!」 「思い、ですか……」  真っ先に返って来た言葉は、私を落胆させるものだった。  私達が獲得出来る感情は擬似的なものにすぎず、本質はプログラムだ。“思い”が必要になるとすれば、やはり、私達が家族を獲得する事は不可能になってしまう。
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