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時間にして十分ぐらいだろうか。軽トラックが止まった。
ここでどうにか菜摘は段ボールをよじ登った。素早い身のこなしで荷台に躍り出る。
大きなガラスが見えた。どうやらコンビニのようだ。
店に入る小太りのおじさんの姿が見えた。細身のおじさんはどこだ。
「あれ、猫ちゃん。ダメだよ、うちに連れて帰るんだから」
おじさんが菜摘に手を伸ばす。菜摘は反射的にその手に爪を打ち込んだ。
「ぎゃああ」
悲鳴を上げるおじさんを横目に荷台から飛び降りた。あとはどこをどう走ったか覚えていない。気がつけば菜摘が通う高校の校舎の前にいた。
菜摘は細い路地に面した校門の前で、じっと待った。あまり人は通らない。縄張りがあるらしく、ときどき狂暴そうな顔をした猫が現れては威嚇された。その都度、菜摘は身を翻し、離れては戻る、を繰り返した。
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