猫になった女子高生の話

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 陽が西に傾き、課外授業が終わる時間帯だとわかる。  菜摘の前を制服姿の生徒が過ぎて行く。その中に菜摘の姿を見つけた。なぜか結衣と一緒じゃない。菜摘の知らない子と並んで歩いている。どうして他のクラスの子なんかと一緒にいるのだろう。中身が違うと気が合う子も変わるのだろうか。  素朴な疑問を浮かべながら、菜摘は必死に菜摘になった猫を見つめる。  こっちよ。気がついて。  一瞬だけちらりとこちらを向いた目は陽光を浴びて光っていた。その目に菜摘の姿は映っていない。彼女はまるで菜摘に気がつくことなく、楽しそうに笑いながら過ぎて行った。  場所が違うからかな? とりあえず洋品店に戻ろう。  菜摘は駆け出そうとして足を止めた。学校のほうから誰かが歩いてくる。  うつむき加減で歩く姿から足取りが重そうに見える。  同級生だったらいいな。顔を見せて。私に気がついて。無理だとわかっているのにそう思ってしまう。  あ、あれ?  女子生徒は結衣だった。いままで見たこともないぐらい暗い表情をしている。どうしたの? そう言って駆け寄りたいのに猫のままじゃどうにもならない。  結衣は小さく息を吐いた。その拍子に一筋の涙が頬にこぼれた。  どうして泣いているの? なにがあったの? もしかすると私となにかあったのかもしれない。でなきゃ一緒に帰るはずだもん。それとも……。  そうだ。朝からどこか暗い表情をしていた。  菜摘は今朝通学しているときに見た結衣の様子を思い出した。もしかすると昨日、彼氏に会いに行ったときになにかあったのかもしれない。  いろんな想像が頭の中で渦を巻く。だけどなにもできない。すごくもどかしい。
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