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「和時……ボクは、ボクは…」
「空、つらいのはわかるよ。俺だって見ていられない。でもね、翼くんは今までも、君のために何かをすることだけが生きがいだったんじゃないかな」
「え」
「君のお世話をずっとしてくれたんだろう?」
翼はにこやかに微笑んでいる。
「彼の生きる道は、空の体の中しかないんだ」
「和時……」
ぼろぼろに泣き崩れた自分と同じくらい、和時も泣いている。
「受け入れてあげなさい。君にしかできないことなんだろう?」
「和時、本気……なの?」
「シエルさん、俺からもお願いします」
頭を深々と下げる、翼と周囲の大人。もうこれは決定事項なのだ。
「許さない……」
「シエルさん」
「ボクは君のこと許さないから! 一生忘れてやるもんか」
「……ボクはシエルさんに会えてよかったです」
「直人、休止モードに移行」
「了解」
「待って……本当に、翼……」
「シエルさん、いいえ、空さん。大好きでした。貴方は幸せになってください」
翼の声を薄れゆく意識の中で聞いた。
どこかで生きててくれたらいいなと思っていた。でもこれは、自分のことに夢中で翼のことをおろそかにした罰なんだ。翼と引き換えに生き延びた身体なんて、一体どうすればいい?
――和時さんがシエルさんに出会ってくれてよかった。俺は安心しました。
バカ。おまえの保護者はボクなのに。
――これからはずっと一緒ですよ。シエルさん。俺はずっとあなたの中にいるんで。
そうだよ、ボクが止まるその日まで一緒にいてくれよ。
――はい、シエルさん。
翼が自分の身体に溶け込んでいくような感覚があり、部品交換は短期間で完了した。ステータスランプはオールグリーンになり、空の身体は正常稼働品として、トニーエリクトン社の管轄アンドロイドになった。
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