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いつも先生が来る日は雨が多くて。
いつも傘を差して歩いて来る先生をこの窓から見ていた。
でも、今日は無駄に晴れている。
最後の先生の授業の日がこんなに晴れるなんて…。
そして、先生の授業ももう必要ない。
志望校を諦めて、私は学校を決めた。
逃げたって言われるとそうなのかもしれない。
だからもう、受験のための家庭教師なんて必要ない。
今日、先生が来なくても構わない。
私はいつもの様に窓から先生が坂を上って来るのを見ていた。
暑い夏の日も、雪のちらつく日も、先生はこの坂を上って来た。
私はそんな先生を見るのが好きだった。
憧れ…。
憧れなんだろうか。
恋愛以前である事は間違いない気はするけど…。
先生は時間通りに坂を上がって来る。
珍しく晴れた日に、先生はいつもと変わらない歩幅で坂を上って来た。
来た…。
私はそれを見ると、先生に見つからない様にカーテンの陰に隠れて、先生の姿を見る。
こうやって先生を見ていると、何か悪い事をしている様な気分になる。
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