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家庭教師なんて必要ない。
皆と同じ様に塾に行くって言う私に、父と母は家庭教師の先生を探して来た。
近くの有名大学の学生だったけど、教え方も上手く、私はあれだけ嫌いだった勉強を自分からする様になった。
志望校には届かなかったけれど、自分では上出来だったと思う。
先生とは色々な共通点があった。
ロックバンドのシアンズマゼンダが好きな事、ケーキよりあんこが好きな事、世界史に出て来る長い名前の人がどうしても覚えられない事、カレーが嫌いな事、そして名前が同じアキラだって事。
「晶…」
母の声が聞こえ、ドアがノックされる。
「何…」
私は慌てて椅子に座り、机に広げた参考書に目を落す。
よくよく考えたら、もう参考書を見る必要も無いんだけど。
「先生がいらしたわよ」
母はドアを開けながら言う。
「うん…。もうそんな時間なのね」
私はそう言って立ち上がった。
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