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先生は机の上の参考書を手に取り、それを閉じた。
「今日は最後の授業だから…」
手に持った参考書をブックエンドの間に立てた。
「今日は参考書はいらないよ」
先生は鞄からお絵描き帳を取り出した。
「さっき駅前の百円ショップで買って来たんだけど」
と同じお絵描き帳を二冊、机の上に置いた。
「お絵描き帳ですか…」
小さい頃によく母が買ってくれた。
両手をクレヨンで汚しながら私はお絵描き帳からはみ出す程の絵を描いていた気がする。
「お絵描き帳ってさ、何か良くない…。ノートみたいな線もマスもない、真っ白な紙。縦に書いても、横に書いても良い。自由なモノ」
「あ、だから自由帳って言うんですね」
先生は人差し指を出して頷く。
そしてペンを上着のポケットから出すと、そのお絵描き帳に何かを書き始めた。
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