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それから、2人はいろいろなことを話した。
洪水がなかったらどんな世界だっただろうかとか、もしひとつだけ願いが叶うとしたら何を願うかとか。
けれど、翌日になると、モモはほとんど話さなくなった。
仲良くなれたと思ったのに、なんで?
クロは寂しくなって、何度も話しかける。
「モモ、どうしたの? ぼく、何か嫌われること言った?」
すると、モモは小さな声で答える。
「もうお腹が空いて動けなくて……」
その時、クロは初めて気づいた。
クロはそこに生えている草を食べながら話していたけど、隠れているモモは何も食べてない。
クロは慌てて辺りに生えている草や花を咥えると小さなうろの中へ押し込んだ。
自分が食べるのも忘れて、モモのためにどんどん押し込む。
しばらくすると、うろの中から、カサコソと物音が聞こえるようになった。
「ありがとう、クロ」
名前!
初めて呼ばれた。
嬉しくなったクロは、うろに向かって話しかける。
「モモ、出ておいでよ。外で一緒に食べようよ」
けれど、返事はない。
「ねぇ、モモ、外で一緒に遊ぼう?」
しばらくして、小さな声がした。
「そうやって私が出ていったら、食べるんじゃない?」
確かに初めは食べようと思って追いかけたんだった。
なのに、今はそんなこと考えてもみなくなってる自分にクロは驚いた。
「食べないよ。ぼく、もうねずみは食べない。だから、出ておいでよ」
しばらくすると、モモはうろから小さな顔をちょこんと覗かせた。
でも、穴から外へは出てこない。
出てこないけど、顔を見て話せるだけで、クロは満足だった。
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