何故に白ブリーフは恥ずかしいのだろうか?

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 帰宅後、ぼくは母に怒鳴りつけるように叫んだ。 「お母さん! 小遣い頂戴! 今月は多めに頂戴!」 「何よいきなり? 今月はもうあげたでしょ?」 「パンツ買うの!」 「はぁ!? サイズでもキツイの?」 ぼくは母に今日の事件を説明した。母はうんうんと頷いて耳を傾けていた。 ちなみにぼくの白ブリーフであるが、田舎の雑貨屋で三枚980円のセール品で購入したものを二セット。つまり六枚の白ブリーフを履き回していることになる。セミビキニタイプと股幅広めタイプの二種類だ。田舎を出る少し前に買ったもので、サイズは丁度良く、ゴムも緩くなく、糸の解れもなく、汚れもない。 つまり、現状は新しいパンツを買う必要性はないと言うことである。 「駄目よ。今新しいの買ったら今のパンツ履かなくなるでしょ? 勿体ないじゃない。最近買ったばかりだし」 「嫌だよ! 恥ずかしいよ!」 「パンツ一枚で外に出るわけじゃないんだし、いいじゃない」 「着替える時に恥ずかしいんだよ!」 「男が男のパンツなんてじっと見るわけないでしょ? 今日はたまたま見られただけでしょ? 気にしなくていいじゃない。お母さんが子供の頃なんか男子も女子も同じ教室で着替えていたんだからね。お母さん、男子にショーツやブラジャー見られても気にしなかったわよ」 「気にしろよ! お母さんの子供の頃の常識でしょ? それ?」 「別にブリーフでも良いじゃない? それに、小学生の身分で柄のついたパンツはまだ早い!」  駄目だ、取り付く島もない。ギリギリ昭和の平成初期に小学生だった母はほぼ昭和の人間だ。平成後期のゴリゴリに固まった厳しい価値観なんか微塵も持ち合わせていない。何より田舎暮らしでほぼ平成初期の価値観は持ち合わせておらずに昭和の人間、下手したら団塊ジュニア世代と同等の価値観しか持っていない。白ブリーフが恥ずかしいと言う羞恥心一つを武器にして議論を重ねるには相手が悪い。それこそああ言えばこう言うだ。 ここは小遣いを貯めて、自分のパンツを買う作戦に切り替えよう。ぼくは次の小遣いまで白ブリーフの屈辱を甘んじて受けることにした。
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