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ぼくは白ブリーフを履き続ける者のうちのの一人と仲良くなった。体育の時間の着替えの時にそれとなく尋ねてみた。
「珍しいね、ブリーフ」
「ん? 俺ずっとサッカーやっててな」
「ああ、サッカー部だったな」
「ほら、サッカーって走り回るじゃん? 股間がブラブラしてると走りにくいし。ブリーフの方が動きやすいじゃん?」
「だからって白ブリーフってのも……」
「どうして? 別に普段から下着姿でウロウロする訳でもないし。色だっていっぱいあるし、別に黒だろうと迷彩だろうと何色でもいいんだけどね。親が買ってくるのが白ブリってだけの話じゃん? 悪い?」
「あ、いや…… そうじゃないけど」
ぼくはその友人との人間としての器の違いを見せつけられてしまった。ぼくも一年前に友人達の前で同じことが言えていれば、たかが白ブリーフでこんなに恥ずかしがることもなかったし、トランクスに変えてもブリーフ卒業なんて考えが至らなかっただろう。一年前にぼくは白ブリーフを履いていることから激しい敗北感を覚えたのだが、今回はそれとは違う激しい人間の器としての敗北感を覚えている。
この敗北感から分かったことは……
ブリーフを卒業することに何の意味もないことに気がつけずに、白ブリーフを履くことを周りに流されて恥じていた自分は「お子様」と言うことだけである。
おわり
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