「死骸」

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 そうやって、私がいくら説明しても、クラスメイトは首をかしげるばかり。 「死んだのに美しいなんておかしい」  不謹慎だと言いたげな声も上がったわ。  けど、「そんなことない!」と否定を出来なかったのは、友達は実際に見たわけじゃないし、私自身が美しさの理由を説明できていないせいもあったし、死骸を美しいと思うのは不自然なことだって感覚が私にもあったから。  つまり友達の意見は至極真っ当なもの。ちゃんと受け止めなくちゃいけない。  とはいえ、私が感じた美しさは本物だったはずよ。だからいま、私は帰り道で、どうしてあの猫が美しかったのかを考えている。  美しいと感じたのはどうしてなのかしら。返答がない問いかけを自分自身に訊ねる。こういうのを自問自答っていうのよ。先週の国語の時間で習ったわ。その時は、自分のことなのだから聞かなくても分かるでしょ、と思ったものだけど、実際に体験して分かることもあるのね。  信号で立ち止まった合間を使って、今朝の光景を思い出してみた。  冷たいアスファルトの上に佇む白い猫。その周りは赤く染まっていた。  赤と白のコントラストが綺麗だったのかしら?
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