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慣れないスマホに悪戦苦闘している航の手を引いて、初めて二人でお茶をしたお店に向かった。
今日はここで一日中スマホ講座を開いてもいいかもしれない。
これはきっと楽しくなりそうだ。
この一年は航に教わってばかりだったから、今度はそのお返しをしよう。
遊びに行く回数も増やして、たくさん思い出を作ろう。
その前に、航のことを教えてもらわないと。
歳はいくつで、お仕事は何をしてて、普段はどんなふうに過ごしているのか。
聞きたいことは山ほどあるんだ。
これまでいろいろ我慢してきたこともあるけど、それらももう必要ない。
思い思いに話して、いっぱい笑って、時には泣いたり怒ったりもするかもしれないけれど、航と一緒にたくさんの幸せを作っていきたいと、心から思った。
とりあえず、ホワイトデーのお返しはちゃんと用意しているのか確認しよう。
もしも忘れてたら、まずはそこから教えてあげないと。
航から教えてもらった幸せのレシピはまだ十ページ分くらいしかないから、これからは二人で一緒に書き足していこう。
そんなことを考えながら、瑞貴は航の手をぎゅっと握ってカフェの入り口をくぐったのだった。
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