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「今日はどこに行くの?」
電車が動き出し、いつもの質問をする。
航も航でこう聞かれるのを待っているのか、いつも決まって自分からはなにも言わない。
「それなんだけど、実はまだ決めてないんだよね」
「え、どういうこと? ノープランなの?」
「そうじゃなくて、三つの候補があって決めてないの」
この展開は今までになかった。
航に言われるがままついていけばいいと思っていた瑞貴は、選択肢が複数あるらしいことに嫌な予感を覚えた。
「えっと、その候補は聞いていいのかな?」
遠慮がちにこう言ってみたものの、なんとなく航から決定権を委ねられそうな気がして、できれば聞かずにやり過ごしたかった。
「とりあえず次の次で一回降りるから、そこで話すよ」
どうしてもったいぶる。
こんなことも今までになかった。今日はそういう日なのか。
どんな選択肢が用意されているのか、見当もつかないけど考えてみる。
なんとなく航が言いにくそうにしているのがヒントだと思った。
「乗り換えるの? やることは決まってなくても、行き先は決まってるってこと?」
「えっと、何をするか次第で変わるの。乗り換えるかもしれないし、乗り換えないかもしれない」
それって、選択肢によっては移動しなくても大丈夫ってことだよね。
その駅はある程度知っているけど、カラオケくらいしか思い当たるものがない。
これ以上の情報は得られず、特に予想も立たずに乗り換え地点に着いた。
電車を降りて改札をくぐり、ロータリーの手前で航が足を止めた。
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