10月・未知との遭遇

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10月・未知との遭遇

 十月に入り、体感的に季節が進んだことを実感する。  九月末にやってきた台風が残暑を吹き飛ばしてくれたのか、それ以降秋らしく過ごしやすい陽気が続いている。  今日が(わたる)とのお出かけの六回目であり、一年という約束をふまえるとこれで折り返しということになる。  前回は帰りしなに気落ちした瑞貴(みずき)だったが、日が経つにつれ少しずつ回復し、月が替わる頃には第二日曜を心待ちにするようになった。  航とは仲良くしていたいし、なによりその日一日を楽しみたい。うじうじ悩みながら遊ぶより、心から楽しんだほうが航もきっと嬉しいはず。  そうやって自分を鼓舞しながら、今日もいつもの時間にいつもの場所で待機している。 「おはよう」 「乗ればいいんだよね?」  先月から前日に連絡が来るようになり、今回は電車を使うことは前もって知らされていた。  どこで何をするのかを明言しないのは変わらないのだけど、今回は着脱しやすい服装を指定された。  季節的にも服装選びが難しい時期だから、言われなくても自然とそうなったと思うけど、これは航の配慮ってことでいいのかな。
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