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十.
あぁ、同じだ……!
あの時と、同じ……!
僕はまた、こんなミスを……!
奈緒……助けて……!
奈緒……!
パニックにもがきながら、ふいに自分の記憶とたまどめから流れ込んだ奈緒の記憶が入り混じったフラッシュバックに襲われる。
あの時も僕は、慣れてきた慢心で少し深い所を見ようとして、珊瑚礁が終わる急斜面へ一人で近付いて、ダウンカレントに飲まれたんだ。
必死に戻ろうと暴れたせいでホースが岩場に引っかかってレギュレーターが外れて壊れて。
ナダさんよりも先に気付いた奈緒が、慌てて僕を迎えに来て、優しく抱き締めて、自分のレギュレーターを僕に咥えさせて、また自分に戻して呼吸して、って繰り返して。
だけど二人でそのまま流されてしまって。
奈緒だって講習中の初心者で、ものすごく怖かったんだ。
深い闇に吸い込まれ遠ざかる海面に、恐怖心が湧き上がってきて、でもそれは、自分の死よりも、僕への心配の方が強かった。
後にナダさんに聞いた話では、潮流はいずれ収まるからその時に落ち着いて浮上すれば海上に戻れたのだけど、そんなことなど知らない奈緒は、こうして二人で通常の倍の早さでエアを使い切るよりも、僕一人を助けようと思った。
奈緒は、僕の背後に回ってレギュレーターを僕の口に押し込んで押さえ付けると、僕を固く抱き締めた。
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