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「恋愛の好きと友情の好きってよくわからなくなることない?」
放課後日直の俺に付き合ってくれているから感謝しているけど、何故急にそんな話を。
目の前の席でこちらを見ながらスマホをガン見している大野をジロリと見た。
「は?何?」
「いや、例えば女子とかさ仲良い奴とかって好きじゃん?でもそれは友情で…それって本当に友情なのか?」
「友情と恋心わかんないの?」
「俺の話じゃなくてさ、違うクラスの奴の話。そいつが言ってて、山村はどう思う?」
どうって言われても、俺はあまり女子とは仲良くないし。
「俺はハッキリわかると思うけど。」
「好きなやついんの?」
「いないけど…」
大野はパズルゲームをしていたスマホをバシンと机の上に置いた。
「いないのか。」
「…なに?悪い?」
「そんなこと言ってないし。」
「お前はいいよな、周りに女子がたくさんいてさ。」
大野は明るくてイケメンだから女子が寄ってくる。多分この話は自分自身の事で、昨日まで友達だと思っていた女子が告白してきたとかそんなとこだろう。
「まあ、ゆっくり考えれば?その子のこと。」
「んー、ああ。」
否定しないのかよ、普通に相談してくれればいいのに。
少し寂しい気持ちになった。
「どんな子なの?」
「え?何が?」
「何がじゃない、告白されたんだろ?」
「違うよ、なんでそうなるの。てか俺の話じゃねえ」
「はいはい」
今更否定してるのが少しおかしくてふっと笑った。
日誌も書き終えたのでパタンと閉じた。
「はい、帰ろ。」
「うん。」
歯切れが悪いような返事をされて、もしかしてまだこの話終わってなかったのかと話を聞く体勢を今一度取る。
「相談なら乗るけど?」
大野に一言伝えると少し笑って首を傾げた。
「俺の話じゃないし。」
「なんでそんなに強がるんだよ。いいじゃん、恋愛トークなんてあまりできないんだし。」
「お前から恋愛トークとか言われると鳥肌がたつな。」
「…あっそ」
俺は優しくして損したと思いながら帰り支度を始めた。
その間も大野は俺をぼーっと見ながら溜息を吐かれた。
「…何?」
待ってくれていたのに不機嫌丸出しにしてしまう。
「親友の好きなのかわかんないんだよなあ。」
「…じゃあその子とくっつきたいとか、手を繋ぎたいとか思うわけ?」
「…」
大野は腕を組みながらこちらを見た。
「なるほど…」
帰り支度も大体済んだので、リュックを背負う。
「お待たせ、帰ろうぜ。」
「…うん」
「で、わかったわけ?」
「わかったかも。」
「急に素直になるな、気持ち悪い。」
「ひど」
ガラガラと教室のドアを開く。
「あ、電気消して。」
振り向くとじっとこちらを見る大野と目が合った。
「は?何、怖い。」
俺は思ったことを何も隠さずに声に出した。
まだ席に座って頬杖つきながらこちらを見てるんだ、怖いだろ。
「帰らんの?」
「これは恋愛の意味らしい。」
「は?」
ふふふと笑いながら帰り支度をし始めた。
「ちょっと、怖いよ。」
「まあまあ、帰ろうぜ。」
「うん…」
がしりと肩を組まれた。
なんだか機嫌が良さそうだ。
「で、付き合うの?」
そんなご機嫌な大野に聞いてみる。
「うーん、どうかな?どう思う?」
「俺に聞くなよ。」
「好きな人いないって言ってたし、チャンスくらいくれよな。」
「は?」
ニヤリと笑った大野は小走りで下駄箱へと向かって行った。
(まるで俺に言ってるようで…)
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