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「君のお父さんを呼んでください。今すぐに!」
ドアを勢いよく開けた男が萌乃に向って叫んだ。
ここは高越萌乃のアルバイト先の喫茶店である。
数人の客とマスターは、ギョッとしていっせいに男の方へ目を向けた。
「あの~どういうことでしょうか?
私の父って…」
「だから、急で申し訳ないのですが、君の父の秀夫さんを
ここに連れて来てほしいんです」
その男性は、長く息を吐き出した後
「僕は君のおばあさんの結婚の約束をしている。
どうしても君のお父さんに結婚を許してもらいたいんです!」
と目に涙をため、まくしたてるように言う。
一気に言ったため、口の端に唾が溜まっていた。
萌乃の頭の中は???になった。
変なことを言っているのは、ぱりっとしたスーツを着こなし
ている二十代半ばの男性。
意味不明のことを言っているが、私の父の名は確かに秀夫である。
睦子おばあちゃんは76歳になる女性だが、この男性と
接点があるとは思えない。
新手のストーカー?と萌香は思ったが、真剣な姿を見ていると
いやがらせではなさそうだ。
萌乃はこんな状況の中、冷静に考えていた。
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