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「時瀬くんの髪は自然な茶色で綺麗だね」
おれの目線より少し上。額にかかる薄茶の前髪に視線を向けた榊が、ふわりと笑う。
目の前で笑う彼女と、交わりそうで微妙に交わらない視線。それがもどかしくて。胸の奥が、妙にそわそわと痒くて。一瞬でもいいから、その視界に入れてほしいという焦燥に駆られる。
榊は特別に整った顔立ちをしているわけではない。
二重で黒目がちな瞳がリスとか子犬とか小動物っぽい印象を彷彿とさせるけど、それ以外にはあまり特徴のない普通な女の子だ。だけど、ときおり見せる無防備な笑顔が、どうしようもなくおれの目を奪う。
友達としょっちゅう寄り道している駅前のマックの店内。周囲は騒がしくて、店内を照らす蛍光灯の光の明るさだって普段と変わらない。
それなのに、榊 柚乃の笑った顔は、おれが今まで見た誰のものよりも眩しくて綺麗に見えた。
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