居候猫のおかげ

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 数日後。  近所の小さな広場のベンチで鈴木を見つけた。  ベンチには女の子が座っていた。  黒髪のショートボブで、背が低く、華奢な体格の、どこにでもいる普通の女の子だった。  同い年くらいで、可愛らしい白いワンピースを身にまとっており、とても幸せそうに鈴木を見つめていた。  特別その子に何かを感じたわけではない。  鈴木に餌をやっている姿を見て、『あ、やっぱり他から貰ってたな』としか思わず、女の子に興味は微塵も湧かなかった。  その子は僕と目が合うと、にこりと微笑み、会釈した。  幸いなことに、その女の子は他の女子たちのように、僕に騒ぎ寄ってくることはなかった。  だから、良い印象は特になくとも、悪い印象は抱かなかった。  でも、その子と一緒に並んで鈴木を愛でる気はなかったので、その日はスルーして家に帰った。  自宅に戻ると、嗅ぎ慣れない香りを微かに感じ取った。  甘い、バニラのような香り。  鈴木がスイーツ店にでもお邪魔したのだろう。  そう思い付けば、お洒落気の無い自分の部屋と、ポップな内装のスイーツ店、更には垢抜けた雰囲気のあの白ワンピースの女の子とを比較してしまい、何だか負けたような気分になる。 (鈴木もメスだから、スタイリッシュでファッショナブルな空間が好きなのかも)  良く分からない嫉妬の感情を抱きながら、ふて寝するように僕はベッドに入った。
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