卒業

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 付き合い始めの頃、1分でも早く会いたくて彼女の会社の近くで待ち合わせた時のこと。  たまたま出るのが一緒になったとかで彼女の隣を歩いて来た同僚は、嫌味かと思うほどスーツ姿の映える男で、靴もぴかぴかに磨いてあって、ネクタイもよく分からないけど高そうで。 「これが彼氏?マジ?すげー若いの捕まえたな」  彼女は『若者が眩しいんだよ』とフォローしてたけど、俺は……俺じゃやっぱり相応しい彼氏には見えないんだと思った。  俺なんかじゃなくて、ああいう男が支えてあげた方がいいんだ。  自分も、いつ会えるか分からない年上の女性より、いつでも会える同い年の方がきっと合ってるんだと思っていた。  そう思おうとした。
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