卒業

11/16
前へ
/16ページ
次へ
 アパートのインターホンを押すと出てきた彼女はもう部屋着に着替えていて、少し痩せたように見えた。  頬も、ワンピースの丸く開いた襟元から覗く鎖骨や首筋も。 「ごめんね。卒業式で疲れてるとこ、わざわざ来てもらって」  俺は黙って首を振った。 「時間ある?」 「もう、今日は用無いから」 「じゃあ、上がって」 「お邪魔します」  靴を脱いで部屋に上がると、彼女はまじまじと俺を見上げた。 「なに?」 「……背伸びたかなと思って。スーツだからかな」 「久しぶりだからじゃない」 「……そうだね。……今お茶淹れるから、座って」 
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加