卒業

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 ここはクッションや布団の色にしても柄付きのカーテンにしても、カワイイものが好きっていうのが全面に出てるし、ゲーセンで取ったぬいぐるみがそこらに置いてあったりする。  その中には俺が取ったのもある。 「……頭痛え……」  確か、飲み会の後でコンビニ寄って水買った気がする……と思ってリュックを探ると無くて、思い違いかと思っていると鍵の開く音がした。 「おはよう。起きてた?」 「おはよ。……あのさ、俺昨日ペットボトル買ってなかった?」 「それなら、その辺置きっぱなしにして寝ちゃったから、冷蔵庫入れといたよ」 「……そっか。ありがと」 「ていうか、記憶あるんだ。だいぶ盛り上がってたから、覚えてないと思ってた」 「いやいや……」  はい、と出してくれた水を煽るように飲むと、喉から腹まで冷たいのが今どこ通ってるかがはっきり分かって、だるかった体が起きてくる。 「サンドイッチとお握り買ってきたけど、食べられる?」 「食う」  袋から梅のお握りを取ってかぶりつくと、彼女のメッセージを思い出した。 「あのさあ、……ずっと連絡取ってなかった彼女が、卒業祝いくれるって。それって、どういう意味だと思う?」 「あ、連絡来たんだ」  この部屋の主は、うーん、と少し考えて答えた。 「それは、どっちかしかないよね。寄り戻したいか。はっきり終わりにしたいか」 「……だよなあ……」  はぁ、と溜息をつくと、また頭の芯がズキズキと痛む気がした。
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