卒業

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   にやっと笑って、ぽんと彼女の肩を叩くと 「先行ってるよ」 足早に去って行き、彼女は 「え?……え?」 連れの背中と俺を交互に見てしばらく固まっていたけれど、ようやく口を開いて言った。 「あの……私?」 「はい」 「なんで?いや、スマホのお礼ってことなら、助かったし、全然構わないけど……」 「あ、じゃあ、それでいいです。お礼ってことで」  うまく説明できる自信がなくてそう言うと、力が抜けたように彼女は笑った。 「だよね。ああ、びっくりした。いいよ」 「……本当ですか?」 「うん。……知ってるか分からないけど、あたしたち何度もお店行ってて、ハキハキして感じいい子だなって思ってたから」  予想外の言葉にぽかんとしてると 「じゃあ、どうしようか。連絡先、いい?」 「え?あ。……スマホ、ロッカーに……」 「ここにあなたの電話番号入れてくれたら、私からメールするよ」 「……サーセン」 今、自分が届けたばっかりのスマホを差し出され、入力する指がふるえた。
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