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「和馬くんって、年上の彼女さんと付き合ってるんだよね」
「え?」
バイト先の女の子に言われたのは、彼女と付き合って半年経った頃だった。
周りは、彼女が居てもだいたいは同じ学生同士で、社会人の彼女が居るってだけで珍しがられたり羨ましがられたりで、割とそのことは皆に知られていた。
「……まあ……そだけど」
「ねえ、じゃあちょっと相談いい?彼氏と喧嘩しちゃってさ。男の子の側の意見聞きたくて」
別に、年上と付き合ってるから俺も大人ってわけじゃないのに、どうも女の子はそんな錯覚をするらしかった。
「急にごめんね。今度の日曜なら」
「あー……悪い。その日、俺フットサルの試合ある」
たかがサークルだし休んで休めないものじゃなかった。
ただ、……ただ、小さな、1円の得にもならないちっぽけな意地だった。
忙しいのは分かるけど、彼氏だと思ってくれるなら俺のことも優先して欲しいという。
「そっか……分かった。ごめんね。じゃあ、また連絡する」
「彼氏、結局別れちゃった」
「そうなんだ」
「和馬くんは?彼女さんとうまくいってる?」
「うまくいってないよ」
その時、俺はそう答えたら相手がどう反応をするか、薄々分かってた。
俺がちっぽけな反抗を繰り返すうち、いつからか彼女からの連絡は途絶えて、俺も――――もともと無理だったんだと思い始めていた。
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