花弁と棘 -Rose-

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花弁と棘 -Rose-

 ショウ事多田葉子さんとのデート当日。デートが迫る程、いざ身体が火照って眠れないだろうも、何故かぐっすり眠れてただ快眠だった。  ただ時期が春は曙でもあろうし、横浜への転居人が増えて繁忙もあるし。いやショウさんとデートならば楽しいだろうなが、その気持ちが乙女では何ら不安も起こらなかった。  朝9時の10分前に、清らかなエンジン音を聞いた。これは父重富の仕事関係の重機にトラックの音では無い事を悟って、堪らず表に飛び出したら、白のフォルクスワーゲン・ザ・ビートルに黒くゆったりしたパンタロンスーツの一端の女優さんがおらっしゃった。おらっしゃるも何も、その微笑はショウさんしかいない訳ではある。お茶目にルンルンポーズ3パターン繰り出しては、まあ本気何だなとはにかむしかなかった。  ショウさんが簡潔なデートプランを提示した。取り敢えず箱根の衣装部屋マンションに直行し、お似合いのお下がりを見繕って、あとは馴染みの湯治3箇所巡って、体を労りましょうだった。  私は目を細めた。如何にもアフェアな感じが愛人プランで、二十歳そこらの女性が安易に乗るかだった。慌てたショウさんはその場を3周周り、そう横浜ドライブにしましょう。その瞳で成長している横浜をきちんと見たのかしらと問われたら、それもそうだった。何せ思春期で漸く繁華街に飛び出す時期を光を失った事で機会を逸している。undo gunと自宅の往復は坊やさんの送迎であれど、気を使われてか大回りせずにほぼ一緒のルートだった。是非見たいです。その純粋な気持ちが動いて言葉に出てしまった。  幸先の良いデートの始まりは、車中から横浜ならではのやや低層階のビルを上に下に眺め、ショウさんの事細かな解説も入っては、何を今まで心迄知らずに閉ざしていたのだろうかになった。ショウさんはそれだけローズが皆から愛された気を使ってくれてるのでしょうだった。しかし見えぬ瞳でも、ショウさん並みの解説があったら人生はもっと楽しかったと思うと述べた。ショウさんは照れながらも、左手を伸ばし、私の右手は伸ばしては、運転の邪魔にならない様に深い体温を感じあった。  昼は少々早く、定番の横浜中華街ではなく、郊外中腹の隠れ家的庭園の整った気鋭の蕎麦屋に入った。夜は胃のもたれる食事なのかなと逡巡するも、対面のショウさんがずっと微笑みながら左手を握っている事から、はたと気付いた。横浜中華街だったら私が怯んで脱走しかねないとの裁量だろうと。  私は諦めた素振りは無いが、ショウさん逃げませんから大丈夫ですよと答えた。ショウさんは漸く左手を解放し、十割蕎麦の確かな喉越しに感銘した。  そして午後早々に、フォルクスワーゲン・ザ・ビートルを駐車場に止めて港町を軽い運動がてらウィンドウショッピングに入った。ここで私の大凡の関心事項がショウさんにインプットされ、こういう商品もあるのよと、事細かにスマートフォンで検索しては提示してくれた。ショウさんは少々浮かない面持ちになったのは、色彩感覚を強く催さない商品ばかりだったので、まあこれからよねと窘められる語尾だった。  そして横浜高島屋に乗り込み、これから本番よのショッピングと発破をかけられた。常設階はいずれもシック過ぎて早いよ私だった。  そしてショウさんお気に入りのプラダに来店し、今日はローズが主役だからと店長に紹介された。  そして試着はすれど目の飛び出る価格も、ショウさんがブラックドレスいけてるはとデザイン違いのお揃いコーディネートにしては気前良くカードを切った。いやも流石にも、系列店のヘルプに飛び回ってたら碌に使う暇も無いと微笑まれた。  そしてそのお互いにブラックドレスのままプラダを去る前に、撮影コーナーに移り記念写真を撮って貰う事になった。ここ迄で2回撮影不良。いざ生涯で一番た高い服装の為に緊張感が取れないのか、ショウさんが茶目っ気たっぷりに私の左の首筋にキスをしたら、何故か腰が砕けショウさんに委ねてしまった。  3回撮り直された距離感マイナスの写真は、ショウさんだけではなく、私のスマートフォンの待ち受けにされて、はあまあ、の溜め息しかなかった。  そして早くも15時を回ったところで、無理が通るからと横浜ベイシェラトンホテルに入った。何かな、早いとは思ったが、ショウさんにラグジュアリーホテルって一番気を使わない場所よと整然に説かれては、高いとそうでしょうよの仏頂面だった。  それなりにロビーで寛いでは、ショウさんがお友達と挨拶を交わした。お客さんか友達かにはなったが、横浜にそんな不器用なお客さんいないから一瞥だけよになった。  そこからやや暫しで、横浜ベイシェラトンホテルのスポーツクラブに出向いて、ショウさんはカットの高いハイレグの競泳水着を着ては屋内プールで無邪気に泳いだ。私は椅子に座らされ、落ち着いてなさいだったが、これは何かのサービスだろうかと思った。  ショウさんは爪先立ちでプールサイドをぐるり回っては、誰を魅了するかの、いやエグゼクティブな男性にセンシティブな女性もは素知らぬ顔も目は泳いで、水中ターンを軒並み失敗してるから、人類って不思議なものだとは思った。  私はブラックドレスそのままのもっぱらのタオル配りで、ショウさんから届かぬ背中を拭いてが、私の女性も拒まねぬ側面を普通に込み上げて来るものを抑えていた。その流線、どう鍛えているのか女性の線を巧みに残した背筋が逞しく、拭きながらも見とれてしまった。  ショウさんは高校迄習い事一通りだから、体は自然と出来上がってしまったと。家族の話になりそうだったが、視線で気付いたのか強張ったので、私は暫し背中に手を添えるしかなかった。今正面を向いたら、汗かプールの水か分からぬ水滴が流れていたのは察した。何かの絆が触れ合った場面だった。  その汗を心地よく流した屋内プールを上がり、事前に予約入れていた上階のフレンチレストランに案内され、春の夕映えの和らげな中、養護の為にアルコール抜きの、全体的に優しいディナーに移った。デートとしては最骨頂、いや20代突入してこの上があるかはまるで想像出来なかった。  会話は、ショウさんのキートークはEマイナーだからヴィジュアルロックが好きですよね、と持てる知識を最大限投入した。よく知ってるわねの驚き、ピアニストならばそう言う解釈よねと、ショウさんは目に見えて喜んだ。ショウさんの素敵な所は、褒めて欲しいところで褒めてくれるところだ。  そして会話が自然に途切れた時、さり気なく部屋のカードキーが差し出された。私は分かってはいても表情が伴ってなかった。レイさんとの繋がりから女性は嫌いでは無い。今現在の経験値では断然女性の方が多いので、激しくなければ受け入れられる。  ショウさんは安易に保たれない毅然なトーンで続ける。この手のお仕事って男が見えてしまうから、女性に深く癒されたいのよ、私の持ってるもの全部教えるわと、最後は自然な蠱惑混じりに微笑まれ手を伸ばされ、私は潔く心を決めて繋がった。  ショウさんにまたもカード切って貰い、この刻こそが大切とばかり、普通に会話を交わしながら、ゆっくりスイートルームへと手を繋ぎ導かれた。  スイートルームでは一転して沈黙になった。私よりショウさんの心臓の鼓動音が聞こえそうで、どれが優しい言葉か探しているようだった。  もう明らかな照れのある女性同士の暗黙は、レイさんとの長い繋がりで深く理解していた。私は敢えて言う、私をただ愛してると言ってくださいと。ショウさんは、忍ばせた思いを隠せず本来のGメジャーキーで潤みながら言ってくれた。 「ローズ、世界で最高に愛してる。今は私だけを信じて」  私はそれを受け入れ、ショウさんが歩み寄っては、印象深い互いのファーストキスで、流れて来る思いに酔いしれた。  ショウさんは照明リモコンでスイートルームを半照明にし、ショウさんに買って貰ったブラックドレスを丁寧に脱がされ、靴も下着も委ねるまま脱がされ、畳まれ、しばし見とれられた。  ショウさんは乙女の様に恐る恐る触れて来たが、私に他意も何も無いと知るや、ここから本来のショウさんの導きに入り、全てが丁寧で爪先ひとなぞりでも、私の身体中が潤って行った。  見つめては、キスし、抱き合い、宥め合い、そして深くは語らぬもののそれを慈しむ様に、丁寧に繰り返された。  そして火照りが高まると、交互に同じ仕儀で入れ替わり、ショウさんが、私がになった。至らないところはきちんと言葉で諭され、アカデミックであっても、身体はアクセルを踏み続けた。  その仕儀はただ丁寧で、私は角膜移植手術後でも、身体に何ら負担は掛からなかった。ショウさんを信じて良かったと心の底から思った。この瞬間、愛しているかと尋ねられれば、愛してると肉体が即時に反応せざる得ないが、ショウさんはそれを感じてか、敢えて聞かずに静やかな仕儀は続いた。  共に始まり、ゆっくり長くの悦楽のカーブは、お互いの波長が只管相い始め、更に丁寧に触れられたら、果てに行き着くだろうと確信はした。  お互いに向き合って暫し、ショウさんは私の長い中指を労わりながら、ショウさんの温かく愛情に潤った女性器に導かれた。これ迄、より丁寧に女性器の天井を優しく擦り上げ、中程で喘ぎ良いテンポを私は見つけた。私のこれ迄は、レイさんに初めての虐待を最初に話した事で、女性器の中は察せられ避けられ、陰核とシチュエーションだけに身体を重ねてきた。そう女性の神秘がここにはあった。  ショウさんの恍惚の表情に図らずも欲情が催し、私もと恐る恐るショウさんの右手を私の女性器の最初に導いた。いいの、いいの、いいのと、ショウさんは身悶えながら、柔らかの中指を私こそ潤った女性器の中を慎重に進め、悦楽のポイントを得た。図らずもショウさんと同じポイントだったのが、女性同士の身体とは直感で惹かれ合う神秘を更に知った。  もう互いに讃える言葉は優に減り、ショウさんは悦楽の中でも、そうなのとただ頷き、そうですと私も頷き返した。男性器のカリの高いストロークでも当たるかの秘密の場所を、私達は丁寧に撫でていた。  そして互いの頂点。潤いが増しては弾ける音が響き始め、私達は照れ混じりの身体から、自然に打ち消す様に絶頂を迎える声が連なる様になった。そして丁寧過ぎた絶頂が感性も何もかもを飛ばす。  横浜の夜に、ショウさんと私が同時に淑やかに咽ぶと、全てが聞き耳を立てたかの様に、深く淑やかな夜の底にどうしても着いた。私は初めて最果てに辿り着いた。生涯傷ついたまま超えられない筈の壁が呆気なく崩れていて、こんな事もあるのかとやや深い呼吸しては、同じ息遣いのショウさんの身体と深く抱き支え感慨を振り返った。  私の身体はまだ行けるのに、ショウさんは私の身体を労わりながら、上質なタオルで私の顔を整え、流れる汗を拭い、これまで潤った事のない股間を丁寧に拭ってくれた。  そしてやや長い休憩を挟み、ショウさんはどうしてもの愛とはを語る。 「愛って、不思議よね。生まれ持たされた運命か、また強い絆で繋がる事もあったり、或いは一から丁寧な身体の繋がりでより知り合い深い共感を得る事も出来るなんて。多分この3つ全てがあれば幸せなんでしょうけど、生きるという事はそう分かりきった事では無いのよね。それでも愛が何も無いよりは、私は肉体の共感を教える事が出来るの。なんてね。それでもね、教えた術を生かせば、ローズも身体一つで安泰なものよ。どうかしら」  ショウさんは自らをおちゃらかしながらも、目を閉じキスを求めた。それは今時点では、長く優しく、最高に甘美に溢れたものだった。二人同じく伝った涙は、きっと長くは続かない関係だけど、共感出来た証として受け取った。  ショウさんは、バスローブをことりと落とし、たわわな裸身でこう囁く。 「レイは綺麗に言うわ。ローズの棘は甘く切ないって。若さ故のささくれはいつかお思い出になるとは、これは知ったかぶりが言うことね。でもその棘も、きっといつか誰かが丁寧の払ってくれるものなの。私が全部払い切れると思わないけど、でもローズの為なら、最大限の努力はしてみせるわ」  私もバスローブをことりと落とし、共に裸身で抱き合い、互いに先程深く知り得た腰の感度のポイントを躊躇いなく探し当てた。二人の甘い吐息が多くなって行く中、思いが過ぎった。  もう一つの名前、ローズは言い得て妙かもしれない。  これ迄に発露された営みの世界で一枚一枚花弁が剥がされ、棘も私を好きになってくれた皆が取ろうとしてくれる。  残った房に何が出来るか、もし願いが叶うのなら、もう一度咲き誇りたい。私にはまだ歩める時間が残っているのだから。  肢体を晒した官能は再び、長くの悦楽のカーブを同じく描く。今日は2回目だから、より新鮮とか、身体が慣れてしまったとか、そう言うことは無く、優しい刺激は尚も襲来する。  レイさんも丁寧に私の全身をキスしたがるが、それは傷つけない様に何処かで一線を引いていた。ショウさんの全身キスは、もう私達は他人ではないと、丁寧に転がし吸っては、本来あるべき悦楽に誘う。堪らずショウさんに、何故もっと早く奪ってくれなかったのですかと、咽ぶ中漸く言葉を繋いだ。私の肢体知らず普段の面白お姉さんでは、ローズは前のめりになってくれないでしょうと、絶え間無いキスを送りながら、まだ数時間しかない経っていない私のストロングポイントを溜めを交えながら、更に深く長い悦楽に導く。  官能の波が何故止まないかは、何度もの到達後幾許かで悟った。ショウさんはコンスタントに悦楽に導ける、官能を体現出来る、心身共に優った方なのだ。  つい私は口を開く、ショウさんもっと、ショウさんは首を振り、私に任せてと、焦らした分だけ、今回は互いに何故か繊細さだけで、キッチリ1回目と同じ頂上に達した。  私の体力は存分に有り、言葉以上の何か探りたく共に後戯に浸った。私は思い知り過ぎた。ピアノの鍵盤を激しく弾く様なタッチがあれば、快楽は容易い筈も、ショウさんの全身官能の前では太刀打ちも出来ない。私が一歩進んだと思えば、ショウさんは全身で受け応え二歩前にいる。悦楽は共に有するけど、この埋められない差が敢然と存在する。この女性には一生頭が上がらないと知る。それでも安易に遜らず私に愛情を注いでくれるのが、この上ない幸せだ。  21時前に横浜ベイシェラトンホテルをチェックアウトし、ショウさんのフォルクスワーゲン・ザ・ビートルで自宅に送られる中、てっきり会話は華やぐものと思っていたが、ショウさんはいつも下げに入らず、私の会話に微笑みながら相槌を打っていた。ショウさんらしく無いですよも。 「夜の接客業は相槌が命よ。何でも面白がって下げ入れたら、お客さんの最大のオチを消しかねないじゃない。もっとも、ここで面白い事をバシバシ言おうものなら、折角の身体の火照りが消え失せてしまうのが勿体無いわ。今日は特別な日なのよ」  ショウさんの空いた左手に、私は右手を乗せた。あの温もりは今もここに有る。そして、えいとばかりに切り出した。次のデートはいつになるでしょうと。ショウさんは逡巡しながら切に。高尚過ぎるレイの仁義はショパンコンクール優勝のウクライナのピアニスト:ミッシェル・ベラノフのサントリーホールの入手困難のプラチナチケットで、2度目も相応となると難しいものよと。私は何気に聞いたが、ショウさんの反応が然もありなんだった。ペアチケットの相手がローズで無かったら、もうパートナーは自然消滅なのでしょうね。でも、レイに直接そう言う事聞いたら駄目よ、焼けボックリに火が付いて目も当てれない事になりそうだから。  最近レイさんのアパレルの色相がシックになった。恐らく新しいパートナーとで何かが始まったかも知れない。レイさんにしてみれば、何が変わったの思いが互い違いになったかも知れないが、私にしてみれば新しい視界のその方が容姿一般人レイさんでは慣れるにどうしても時間が掛かる、いやその激しく見せる欲情との落差は埋めようが無いかも知れない。つい力が入ったのか、ショウさんが淑やかに諭す。レイとの関係はもう終わった事よ。私は漸く心が傾いた。  無事帰宅後11時、朝6時に起きて後に出勤なのでもう眠らなくてはだったが、ショウさんからの優しい電話は未だだった。やはり、私はレンタル扱いで取り扱いが難しいのかがただ過ぎって行く。   不意に枕元のスマートフォンからLINEの通知音が響き、忙しげに取っては通知を開いた。  メッセージは【麻美ありがとう。今日の美しい思い出でもっとタフになれると思う。】   ショウさん何を弱気かなも、麻美の本名のインパクトが成る程ねだった。照れないでもっと早く名前言えばいいのには、次のいつあるか分からないデートで言う事にした。多分ショウさんは照れ隠ししては抱きついて、麻美、愛してるわ、と言ってくれると思う。  私は返信で【葉子さん、お互い良い夢を見れそうですね。お休みなさい。】  その夜の夢は、久しぶりの色彩の有る原野風景だった。東北か何処か風景を見渡せる無人駅の長椅子で、二人仲良くショウさんと手を繋いだまま、それが長らく続いた。  起きて暫し、ショウさんとそんな関係になりたいは、時間を大切に掛けて行きたいと仄かに心に灯った。
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