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それよりも以前の事だが、左の首から肩甲筋に痛みを感じることが何度か有った。
整形外科では、頸椎狭窄症と診断されたが、首の牽引を続けると一週間ほどで治まっていた。
まさか、その症状の延長が左手の痺れに繋がっているとは思いもしなかった。
「高島さん、高島さん!点滴入れ換えますので腕は動かさないでくださいね。聞こえてますか? 高橋さん!」
(どこか遠くから誰かが私を呼んでいるようだ。)
「えっつ磯・・」
「磯部です。」
(磯部さんは、CCU専属の看護師である。両手に花ならいいが、両腕に点滴なんて、シャレにならない。どうやら片方の点滴を入れ換えているようだ。)
「なんや、夢やったんか」
私が術後34時間の睡眠から覚めたのが数時間前、ヘッドホンステレオの音楽を聴きながら再び寝てしまったようだ。
「高島さん、何か悪いことをしたの⁉『すみません。』ってハッキリ聞こえてましたよ。」
「えっつ、私の声が聞こえた?」
(麻酔から覚めたあの時は、声どころか、一滴の水も通さなかったのに)
「高島さん、今、話してるの自分でも分るでしょ?」
(途切れ途切れであるが、私のシワガレ声が微かに、しかも懸命に囁いているのが自分でも分る。)
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