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嘘じゃ無かった
「良かったね、回復事項第一号だね。高島さんて案外体力が有るみたいね。」
「えっつ、いつ退院出来るて?」
「私、退院なんて言いました⁉ これで右腕の点滴の交換は終わりましたが、次は左腕の交換ですね。本日はそれで点滴は終了です。」
「と言うことは病室に戻れるんや・・うん、そうや・・帰れるんやね? でもCCUは卒業できても磯部さんとお別れするのは寂しくなるね。」
麻酔から目覚めた数時間前には楽のみに水を入れて貰ったり、声が出ない中ジェスチャーでヘッドホンステレオを探してもらったりで、大変お世話になった。
『先生から奥さんに、無事手術が終わった事、電話してもらったよ。』なんて、今はコロナの感染防止のため、付き添いや面会が出来ない中の配慮もしてもらった磯部看護師。
「高島さんの話声が小さくてよく分からないの⁉ 高島さん、その聞えもしないヘッドホン、いい加減外してもらえません。これじゃ会話がかみ合わないじゃない⁉」
(磯部が怒り出したのも無理はない。磯部の知り得るヘッドホンステレオの知識は、スマートフォンで再生している音楽をヘッドフォンにワイヤレスでコンタクトするものであり、
そもそもスマートフォンを持たない私のパフォーマンスその物を疑っているのである。
それどころか数時間前に、このヘッドセットを耳にして楽しんでいる私の仕草を見て、磯部看護師は私をせん妄と判断しているようだ。)
「数時間前、『他に何か入用は在りませんか?』ってあなたが尋ねてくれたから無理をお願いしたんやんか、そのあなたが『外せ』と言うなら仕方おまへんな⁉」
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