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(このヘッドセットは左右両方をセットしないと、片方だけではスタートしない。まさかではあるが人体の水分がコンタクトの役割を果たしているのである。
だから私とて片方を外すと残っているもう一つのヘッドセットも鳴らなくなってしまう。)
「磯部さん、私の脈拍取れますか?」
「勿論、取れるけど、どうかしたの急に? まさかこの鳴らないヘッドホン事件をうやむやにする気じゃないでしょうね?」
「そんなに怒らんと今すぐ、取ってみて⁉」
私が何か企んでると警戒したのだろうか、ヘッドセットを左耳に掛けたままの彼女は妙に優しく私の右手首に指をあてがえた。
「あれ! 何よこれ! ちゃんと音楽聴こえてるじゃん、(^^♪)」
「だろう! これで私のせん妄疑惑も晴れて無罪ですよね、分かってもらえたら今すぐ病室まで戻してもらえます?」
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