一.星取表

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 その激しい衝撃に、電柱の上から見下ろしていた カラスの群れが一目散に飛び立った。 「くっ、ただでは倒れはせんわい。」 老人は態勢を崩しながらも、かろうじて動く右手をついて難を逃れた。 ふと、見上げた向かいのアパートの一室。 その窓のすき間から、隠れるようにこちらを見ている、 哀れんだ瞳の主婦。 「ふん。」 そんなのはお構いなしという姿で、また、ジリジリと老人は立ち上がる。 ついた掌の傷がしびれるように痛む。 「次は負けねぇぞ。お前に黒星つけてやる。」 誰に言い放ったのか、そう言った 老人は震える体を杖にあずけ、 踵を返してその場を立ち去る。 一歩、また一歩。 杖を握りしめた手から滴り落ちる血と汗がまざって、 アスファルトに点々と模様をつけた。 その様子を、遠くから 二つの眼光が見つめ続ける。 その見透かしているともいえる眼差しが 自身に刺さっていると どこかで確信しながら、 老人は帰路についた。  
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