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来る日も来る日も、仕事覚えが悪いために、
兄弟子からいびられる
腐りきった日々。
そんな中で出会った日々の慰みは、
店の裏手に住み着いた、腹をすかした一匹のぶち猫。
最初、残飯をあさりにきたそいつを
見つけた時は追い払おうとした。
本来なら、飲食店に猫はご法度。
こんな所を兄弟子から見られたら、
又、たまったもんじゃない。
しかし、最初は互いに距離をとっていた
一人と一匹はいつしか
だんだんと近づいていき、
互いの心に寄り添ってくるように
なっていく。
そして、手のひらに添えた食べ物を
そっと舐めてくれるようになった時
初めて、老人の心に灯がともった気がした。
また、赤虎の体と違って、
瘦せこけた背中をなでると
そのぶち猫は嬉しそうに鳴いた。
そんな姿が、一人ぼっちの自分と重なり、
老人は店内に聞こえないよう声を出さずに
むせび泣いた。
____ただ、そのぶち猫がその先どうなったのか。
老人は自らの生き方のせいで、
それを永遠に分かる術を失う事になる。
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