二.五月場所

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来る日も来る日も、仕事覚えが悪いために、 兄弟子からいびられる 腐りきった日々。 そんな中で出会った日々の慰みは、 店の裏手に住み着いた、腹をすかした一匹のぶち猫。 最初、残飯をあさりにきたそいつを 見つけた時は追い払おうとした。 本来なら、飲食店に猫はご法度。 こんな所を兄弟子から見られたら、 又、たまったもんじゃない。 しかし、最初は互いに距離をとっていた 一人と一匹はいつしか だんだんと近づいていき、 互いの心に寄り添ってくるように なっていく。 そして、手のひらに添えた食べ物を そっと舐めてくれるようになった時 初めて、老人の心に灯がともった気がした。 また、赤虎の体と違って、 瘦せこけた背中をなでると そのぶち猫は嬉しそうに鳴いた。 そんな姿が、一人ぼっちの自分と重なり、 老人は店内に聞こえないよう声を出さずに むせび泣いた。 ____ただ、そのぶち猫がその先どうなったのか。 老人は自らの生き方のせいで、 それを永遠に分かる(すべ)を失う事になる。
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