動物系人気Youtuber の悲惨な末路

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「よし、今日も30万再生達成!」 「らん丸、明日はヘビと対面するぞー」 ご主人は大人気動物系Youtuberだ。人気になればなるほど、オイラの扱いは雑になり、うんざりだ。例え、今日必死に休みたいとアピールしても 「チッ、今は撮影中なんだから、ゴロンじゃないだろ、らん丸、ほらいつものやれよ」といった感じで全然休ませてくれない。一方ご主人自身はと言うと、ファンの女の子と好き放題、遊びたい放題だ。しかも3年間付き合っている彼女がいるのにも関わらずだ。彼女はものすごく良い人だから、幸せになって欲しいとオイラは思う。 「らん丸、俺ちょっと出掛けてくるわ」 まただ。浮気を知ってるのはオイラだけ。ご主人はうまくやっている。ご主人の彼女は浮気を知らない。形跡を全く残さないのだ。だか、オイラは知っている。これを使わない手はない。 ご主人の彼女が今日は家にやってきた。 「いつものコーヒー買ってきてくれた?」 「あ、忘れてた。今日コンビニ寄らなかったし。」 「あれ、もうストックもないな。いいよじゃあ俺がコンビニ行って買ってくるよ」 「一緒に行こうか?」   「いいよ、コンビニくらい、人の目もあるんだし」 「そか、じゃあ待ってるねー」 よし。オイラはこの時を待っていた。 「しのぶちゃん」 声を掛けてみる。 「へ?」 彼女は周りを見渡し、不思議そうな顔をする。 「しのぶちゃん、こっち」 彼女は立ち上がり、玄関の方に向かう。 「しのぶちゃんなんていつぶり呼ばれただろう、えへへ」 嬉しそうに誰もいない玄関先の向こう側にどうしたの?って聞いている。どうやらオイラの声をご主人と勘違いしている… 「しのぶちゃん、後ろ!」 そう叫ぶと、まさかと言わんばかりに彼女はこちらを振り返った。 「…」 そして彼女はゆっくりと屈み、オイラに目線を合わせてくる。 「やっと気づいてくれたね、しのぶちゃん」 「うん、やっぱり気のせいじゃないみたいだね」 とオイラの鼻をツンツンしてくる。 「で、どうしたの?わざわざそんなに必死にしゃべりかけちゃってさ、猫なのに。」 「オイラはしのぶちゃんには幸せになってほしいんだよ!」 つい力が入ってしまう。 「プッ、フフフ。何の話よ?」 彼女はオイラの唐突な発言に吹き出す。 「今から言うこと、信じてほしい。ご主人は浮気してるんだよ。」 「ない」 オイラが言い切ったか言い切ってないかくらいに彼女はそう言い放った。 「ホントだってば!ご主人は誰にもバレないように上手くやってるんだよ!」 「そんなの絶対ウソ!」 彼女は頑なに拒否した。 「それなら、明日11時に渋谷のハチ公に行けば全て分かるよ。」 「明日は仕事よ。」 「だからこそだよ!」 「ご主人はしのぶちゃんの予定を全て把握した上で、バレないように浮気して…」 「ガチャ…ただいま」 ご主人がコンビニから帰ってきた。 「にゃー」 急いで取り繕って、出迎える。 「お、何だらん丸、しのぶに遊んでもらってたのか?」 ご主人は嬉しそうにオイラに話しかけてくる。そして、ふとしのぶちゃんに目をやると、上手く笑えてない複雑な顔をしていた。 翌日 「ガチャ」 あれ、ご主人帰ってきた。早すぎるな。まだ家を出て1時間なのに。疑問に思いながら出迎えると… 「らん丸、協力してちょうだい」 と何かを決心したような面持ちのしのぶちゃんがいた。あ、そっか彼女は合鍵を持ってるんだっけ。 「オイラを信じて、浮気を渋谷まで確認しに行ったんだね。」 「うん、ホントだったんだね。」 と彼女は今にも泣きそうな顔をしていると同時にオイラに何かを訴えているような気がした。 「協力するよ」 彼女の目を真っ直ぐ射抜く。こうしてオイラと彼女によるご主人復讐劇が始まった。 翌日 「お、何だらん丸、自分の動画がアップされる所みたいのか?」 断じて違う。オイラはご主人のYoutubeチャンネルのログイン情報を得ることがミッションだ。作戦に必要だからだ。一気には覚え切れないので、ご主人がチャンネルに動画をアップするタイミングで近寄り少しずつ覚える。これを繰り返す。一方しのぶちゃんはと言うと… 渋谷の繁華街にて 「お店から出たわね。さぁお店の後はどこにいくのかしら。あっちって確か…」 「よし、これが動かぬ証拠よ」 3日後、オイラと彼女はまたご主人の自宅に集まっていた。今日が復讐作戦決行日だ。 「時間がないわ急ぎましょ、らん丸」 家に入るや否やすぐにご主人のパソコンを起動させるしのぶちゃん。 「らん丸、パスワードは?」 「しのぶちゃんの誕生日4桁にオイラの名前を足したもの!」 「はぁ…呆れた。私達にこんなことしといてそのパスワードって…」 「まだご主人が帰ってくるまで2時間はあるからゆっくりでいいんじゃないの…」 「ダメよ。ギリギリなのよ。動画がアップロードされるまで概算では2時間弱なのよ」 よく調べてるな。目が本気だ。 「えっ…とアップロードはここね、よしポチっと!」 普段は優しそうな目をしている彼女は今まで見たこともない目をしていた。 2時間後…渋谷にて 「今日も楽しかった。次はいつ会える?」 「すぐ会えるよ。また連絡する。じゃあね」 「うん、バイバイ」 帰りしの電車の時間で視聴者へのコメントを返そうとしてチャンネルを開くと… 「ん?今日はコメントがたくさん来てるって何じゃこりゃあ!?」 コメント1「裏でこんなことしてたんだな…」 コメント2「そもそも彼女がいることすら知らなかったww」 コメント3「浮気するとか最低…」 コメント4「猫は癒し系なのに、飼い主は腹がドスグロ系な件w」 「彼女!?浮気!?ドスグロ!?何でこんなコメントが…あれ、タイトルは”私は告発する”だと!こんな動画アップした覚えないのに…急いで帰らないと…」 「ドタバタ、ガチャ」 「らん丸、どうしたんってだよこれは!?お前がやったのか?」 「にゃー(ざまみやがれ、ばーか)」 これが感謝の心を忘れた人気Youtuberの末路である。
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