二度目の卒業

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 そうしている内に、一人の生徒が私たちの方へ走ってきた。その生徒は私が話題にあげた受験の相談を受けていた生徒だった。  「松尾先生、中村先生、一緒に写真撮りましょうよ。皆と一緒に撮りたいんで、来てもらってもいいですか?」  松尾先生はすぐさま「いいよ、撮ろうか。」と明るく返す。  考えているばかりで反応が遅れてしまった私に「中村先生もいい?」と生徒に返事を促される。「ああ、もちろん。」と答えた私に、生徒が何か思い出したかのように話し始めた。  「そういえば、中村先生、受験の相談に乗ってくれてありがとう。実は第一志望の合格発表が昨日で合格してたんだ。中村先生に言われた通り、ちょっとレベルの高い大学に挑戦してみて良かった、本当にありがとう。」  そう言って軽くお辞儀をしながら照れ臭そうにお礼をされた。「そういえば」と言うわりには律儀で、こちらも少し照れ臭くなる。  「良かった、良かった、それは磯田(いそだ)さんの努力の結果だよ。よく頑張ったね、おめでとう。」  私は照れ臭さを隠すように磯田さんの合格を盛大に喜んだ。今から胴上げでもしようかというくらいに。  磯田さんの合格の報告を横で聞いていた松尾先生も一緒に喜んでくれる。  「良かった、磯田さんの努力が報われて本当に良かった。」  磯田さんは松尾先生にもお辞儀をしてから、私たちをクラスの皆の元まで先導してくれた。  結局最後まで松尾先生が私の方を向くことは一度もなかった。正面からはどんな表情で、どんな思いで話してくれていたのか、私にも分かる時が来るのだろうか。
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