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屋敷のドアを潜ってホールに入ると、中央に敷かれた大きなラグには、家紋であろうか、大きな紋章が描かれている。その真上には大きなシャンデリアがぶら下がっており、小さな魔光ランプが幾つも煌めいている。左右には螺旋階段が備えられており、中央部分に入らないよう配慮されているのがうかがえた。
右側の大扉に向かい、その先に続く大理石で出来た廊下を進むと精緻な彫刻が施された扉を執事が開け、俺達をその部屋へと促してくれる。そこは所謂、貴賓室と呼ばれる場所だろう、中央に大きな応接セットが据えられ、窓からはちょうど中庭の大きな庭園が見える。壁際に並んだ調度品も凝った意匠で作り込まれており、全てが一級品だと流石の俺でも分かるほどだ。
案内されるままソファに向かうと、大きなソファの中央にセリスが座り、俺とキャロルさんはその両脇にちょこんと座った。
カイン家の者たちも一緒に付いてきており、彼らは席につかず、部屋に入ってすぐの場所で立ち止まって、跪く。
「……まずはお三方に最大の感謝を。我が家に出来ることがあれば何なりと申してください」
全員が座るのを確認すると、家長であるスイベール・カインがそう言って、倣うようにその場に居るものが皆頭を下げて奏上する。
「……構わん。我も今は冒険者の一人として息女の護衛依頼を受けたのだ。故に報酬をギルド規則に則って払ってもらえばそれでいい。……それよりも」
セリスが悠然とした態度で話していると、少し背中がムズムズするが、そこはまぁ仕方ないと思って聞いていると、話の最後で俺の方をチラと見てくる。
(……な、なに?)
(何ではなかろうが! さっさと人払いをさせい! 肝心な話ができん)
ぽやんとした顔で彼女に念話を送ると、いきなり怒りマックスでセリスが念話で怒鳴る。見た目は全くの無表情なのに、どうやって念話だけは怒れるんだと感心していると、(わえsrdtyぐひじょk!!)意味不明の呪文が聴こえてきたので慌てて家長に話しかけた。
「あ、あの、すみません。今回の件で少し込み入ったお話があるのですが」
そう言って、周りの人たちを見回していると、スイベールも感づいたようで「……わかりました。私だけでよろしいでしょうか」
「……あ~、出来ればオフィリアとジゼルも一緒が良いです」
――わかりました。
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