第2章 旅とハーレム?の始まり

12/21
前へ
/180ページ
次へ
 エリクス辺境伯は、執務室で男と話していた。 「…そうですか。子爵家は取り潰し、本人は斬首刑。彼の縁者は…爵位剥奪の上、蟄居 成る程、大事にはしないと。で、復権派については?」  話しはしているのだが、声は辺境伯しか発していない。 それでも、会話は成立している。 「…はぁ~。そこで、間者の横やりが…。参りましたね」 「分かりました。…一旦、この話は私の胸の内に、仕舞っておきます。」  その言葉を最後に、相対していた、男が下がり、退室する 「エリクス様、今の男は?」 後ろで控えていた、ゲイルが、訝し気に聞く  「あぁ。彼は…そうですねぇ、”影”です。」 「影?」 「えぇ。言わば、国の内外の、調査、内偵が、主な仕事ですね」 「…間諜、ではないのですか?」 「似て非なる者達です。国王直轄の、者達ですので。 言ったように、彼らの調査対象は、国王以外の者、全てです」  「そ、それは…」 「そこから先は、他言無用。…ふぅ。それにしても、 ノート君、自重してくれませんねぇ」 「僭越ながら、何故、あの程度の粗忽者に、 王や、エリクス様が、気を使われるのです?」 「ゲイル、君には、黙っていましたが、この際、知っておいて貰いましょう。 君は、”迷い人”を、知っていますか?」 「…は?はぁ、お伽噺に聞く、”異界の勇者”が、そうだと位には」 「彼がそうです。ノート君、彼は現代に降りて来た”迷い人”です」  ゲイルには意味が分からなかった。 迷い人とは、この世界とは違う世界から、 神が、神託を持たせて遣わせる、神使だと幼いころ聞いた。 ならば、そんな現人神が、辺境のしかも、唯の平民だ等と、そんな訳がない 「エリクス様、その様なごじょうーー」 「冗談ではないですよ。 現に、あの時、彼の横に居た御方は、なんと言いました?」  言われて一瞬の間の後、思い出す 「そ、そう言えば、セレス・フィリア様が…」 「そう、あの、精霊の王が、この地を去るとまで、 公言したんです。私の前で」  もっとも、不可侵で、神の使いとされる、精霊、その王が、存在する国。 エルデン・フリージア王国。故に、この国の発言力は強く、そして、 最も安定していると、言われている国だ。  その、精霊の王が、彼が嫌がる事はしないと、言った。  背筋に、氷を入れられた気分がした。 「わ、私は、なんという事を…」 震えが、悪寒と共に身体を襲う。  「そこまで恐れる事はない。彼は、基本、平和主義だそうだ。 あからさまな、敵対行動をしなければ、分別は、弁えて居ると聞いている」  「…だから、安穏としても居られないのだがね…」 辺境伯の呟きは、ゲイルに届く前に消えた
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加