115人が本棚に入れています
本棚に追加
男爵と侍従が残った執務室
「…あ、あの、ハンス様」
侍従が、恐る恐る聞こうとする。
「出来るんでしょうねぇ。はぁ~~。聞かなかった事にしましょう」
「はい。その方が身のためですね」
「……。」
無言で首肯する男爵。執務室は静寂に包まれる
(本音は…戻って欲しくないですねぇ)
◇◇◇◇
衛兵詰所に、戻ったカークマンと、コンクランは隊長室で、
ソファにへたり込む。
「はぁぁぁぁあ~。何なんだ、アイツらは!!」
「…た、隊長、声が大きいです」
「知るか!…もう!やってられるかよ!お腹痛いよコンクラン!」
「そ、そんな駄々っ子みたいな事を」
「はぁ~~~。でも。助かったのも事実なんだよな」
「えぇ。本来ならば、どこかの村は、諦めるしか、無かったやも知れません」
「…迷い人…世が世なら、異界の勇者様…か」
「…まさに、ですね」
「頭は悪そうだがな…」
「…ぶは!!隊長!」
「それぐらい、言わせろ!でなきゃ、やってられるか!」
「ま、まぁ、理不尽な存在ですからな」
「…嫌な試練が来なきゃいいな」
「…彼は、望んで来たんでしょうか。この世界に」
「さぁな。神のみぞって奴だ」
◇◇◇◇
ギルドマスターの部屋で、なぜか、絶賛、正座中。
「何で?!何で俺、こんな扱い?ねぇ?ひどくない?」
「うるさい!このおバカ!転移魔術などと!…この!この!この!」
セーリスさんが、こめかみをグリグリしてくる
「ぬぎゃぁぁぁあ!それは止めて!地味に痛い奴!」
「…クソったれ!地味にだぁ?こっちが痛いじゃないか!?おバカ!」
”バカン!”「うぎゃ!」
理不尽に、頭をどつかれる。
「まぁまぁ。そろそろ、落ち着いてください。所でセリス様?」
「ん?なんじゃ?」
「…ダメですからね。
後で”こそっと作らせよう”とか、”術式だけメモらせよう”とか」
「ふぇ?シェ、シェリーお主、な、なにををお」
「始祖様。そこはお願いしますね」
「え?転移魔術って、ダメなの?」
「「「ロスト・マジックの最高等魔術です」」」
「うわ!ハモって怒られた。そうか、あ、でもなぁ。」
「なんじゃ?何かあるのか」
「う~ん。やっぱり、子供達の事、気になるし。偶には顔とかみたいじゃん」
「はぁ、お前の居た世界では、出来たのかもしれんが、この世界ではーー」
「あ!そうか!」
「なんだ?!」
「この世界、魔導通信は、出来るんですよね」
「ん?あ、あぁ、声のやり取りと、書類の転送くらいはな」
「え!?書類の転送まで出来るの?じゃあ、簡単じゃんか!」
「いやいや、魔導器はデカいし、魔石の消費も激しいから、簡単じゃないぞ」
そうして、小一時間程で、それは出来上がる
「な!何じゃこれは?!」
「ん?移動型の魔導通信機。ほら、これ持って」
そう言って、何台か作った一台をセリスに持たせる。
「この番号が、通信機に割り当てた番号。
セリスのは3番だから、俺のこれをポチっと」
”ピリピリリ!”
「うお!何じゃ!?いきなり音がしたぞ!」
そうして、使い方を教える。
「もしもし~、見えてる?」
魔導通信機は、スマホ型にした。
厚みが有るので、トランシーバー型の方が近いかな
そして、画面に映る俺を、もう一台の通信機越しに居る面々が
呆けた顔で覗いている
「ん?喋って良いよ?同時通話できるから」
「「「な、なんじゃこれぇぇええぇ!?」」」
「…なぁ、もうちょっと、自重しないか?」
セーリスが疲れ切った顔で、俺に話してくる
「…だがことーー」
「ああ!もういい!それ聞きたくない!何かむかつく!」
『セーリスよ。そこはもう、諦める事だ。
コイツは多分普通に、転移も出来るはずだ
そこを、止めたのだ。これくらいは良かろう』
「…始祖様、術式を、まじまじと見ながら言っても、説得力弱いですが」
『ちっがぁう!これは、セリス!乗っ取ってるのに、身体が勝手に動くの!』
最初のコメントを投稿しよう!