3人が本棚に入れています
本棚に追加
お似合い
とある過ぎ去り日の青春時代の合コンにて…
「俺、42才独身です」
「ふーん」「あの人、わりに若いわね」「んーー今日はイマイチね」
冗談のつもりが相手方3人共皆『普通に』信じた。いつもこうだ。この繰り返しなのだ。
明治、大正、昭和、平成、令和、そしてこの時代も。
幾千回、いや幾万回、いいなづけや大正浪漫パーティー、お見合い、合コン、マッチングアプリ、ふぃーりいんGOOD(通称:お似合いシステム)などを試して来たのだろう。
いつも俺は年齢不詳で誤魔化茶かされてきた。
いつの時代も冗談で言った年齢が信じられ、その先の展開は辛くつまらない。
この名もなき時代のふぃーりいんGOOD対面バーチャルパフォーマンスジェネレート断念回数は3650回目。
この時代だけで無接触型趣味レーティング頭脳マイクロチップオートメーションシステムで試してきた10年間の毎日を返してくれ!!
俺は独り夜の浜辺に行き、思いっきり叫ぶ。
周りの人やカモメや美しく切ない波までもが「サッーと」引いて、どん底まで引き潮になり、時の静寂となってもいい思いで3651回目のシチュエーション「浜辺での出会い編」で精一杯叫び伝える。
「オレー、42才独身ですー」
「私も、42才やもめです」
「嘘でしょ」
「ほんと」
ダメ元で言ったのに、初めて信じられた。
「ほんとって本当のこと?」
「信じるわよ あなたの言ったこと」
彼女の名は「やもめ」だった。おそろいの真正直。お似合い。
開発元の博士は呟く。
「お似合いは1対1仕様だな」
人生120年時代となった今、人生はまだまだ3分の1を経過しただけ…ほんとの事言えば俺はもう余生を過ごしているのだが。
「ほんとの事言ってもいいですか」
「待って 実は私も…」
恋とはいつの時代と時代とお互いを曝け出すもの…
最初のコメントを投稿しよう!