≪ ③ ≫

1/1
前へ
/4ページ
次へ

≪ ③ ≫

 電気ポットの上から放つガン見に気づかないままでいたら……あの目から感じ取れる言葉は、 「ねぇ? ねぇちょっと、そこの?」  少し冷めた感じのお姉さんボイスで、私の名前すら呼びもしないかなと思う。  さらには蔑みの言葉なんかも付属したりして。    で、実際どうよ? と考える。  麗しきプリンセスのいる方から、知らない人間の声で話しかけられたら、ドキっとしない人はいないのではないだろうか。 「なんですかぁ~  どうしたんですかぁ~」  こう言えるのは「にゃあ」と鳴くからであって、 「ねぇちょっと、そこの?」  と言われたら、これはもうホラーである。  口元が動かず電波飛ばしての交信ならば、もうドキドキMAXは確定だろう。  怖がりな性分がそう考えさせるのかもしれないが、 「え?  しゃべれるの?  嘘みた~い!  もっと話そう♪」  と素直にいけるかどうかは甚だ疑問だ。そして、やはりこわい。  口元の動きとリンクしていたら良いかと考えても、それもやはりホラーに過ぎない。  日常化してしまえば動悸も収まるのだろうが、ファーストコンタクトとも言える会話をすんなり受け入れる人は、何人ぐらいいるのだろう。  私は下僕でーす。  と公言していることにも、指摘されたりするのだろうか。  よく鳴く理由は、ぼやき続けていたと判明しちゃうのだろうか。 『実際のところ想像してたのとだいぶかけ離れてはいるけど、慣れてしまえばなんてことない非日常な私だけがもてる特殊能力をフル活用しちゃってる私の にゃんだふる・らいふ』  現代ファンタジーのようにうまくいくのかな。  どう略されるんだろう。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加