ぬくもり

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パソコンの画面を2人でみつめる。 『ほら、こことここに黒いかたまりがあるでしょ。』 「…はい…」 何を言ってるんだろう。 頭の中が真っ白だ。 チカチカして目の前が点滅してる。 あぁ、気持ちが悪い。 『あなたの場合は、若いので進行がはやすぎました。』 申しわけなさそうに説明する中年医師。 白衣の真ん中にコーヒーらしきシミがついてる。 シミをみながら考える。 これから私はどうなるんだろう。 不安でたまらない。息が苦しい。 「あの、手術をするんですか?」 勇気を出して聞いた。 『いや、それは…ないです。 放射線治療も抗がん剤も… 効果は期待できません。』 え… 耳鳴りがする。なんて言った? もう一度、パソコンの画面を見つめた。 こんな小さな奴が… すい臓と胆のうとやらにある黒いかたまり。 あぁ、どうしよう。どうすればいいの? 『今のうちに好きなことをしておいてください。』 何を?好きな事って何?何言っての? 意味がわからない。 何をしたらいいかなんてわからない。 こわい、こわい、こわい、 でも、聞かなければいけない。 「…あと…どれくらいですか?」 動ける時間?残された月日? 『余命は…3ヶ月です。』 ウソ…ウソだ! 胃の具合が悪いだけだったのに… 念の為の検査って言ってたのに… どうやって家に帰ったかわからない。 布団のなかでトラを抱きしめる。 温かいなぁ。 唯一の家族に話しかける。 (トラ…トラ。 生まれ変わっても一緒にいてね。) そっと撫でるとゴロゴロとのどをならす。 あったかいなぁ。 ずっと、一緒にいたかったよ。 ごめんね。 先に行って待ってるね。 大好きなトラ。 あったかいよ。
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