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「黒猫が前を横切ると不幸になるっていうじゃない?」
「ああ、ジンクスね」
「じゃあさ、夢の中に現れる一本足の黒猫は知っている?」
電気を消した薄暗い部屋で明美は成美の話を聞いていた。
明美の他にも風羽が同じように布団にもぐり込みながら聞いている。
頭は半分以上、布団に隠れている。
「もし一本足の黒猫に遭ったら、追いかけないといけないんだよ」
「……追いかけなかったらどうなるの?」
今にもかき消えそうな声で風羽は問う。
「もし追いかけるのをやめてしまったら、夢から覚めることもできずに死ぬの。しかも死体は足が一本だけになっているんだって」
「え、やだ」
「大丈夫だよ、風羽。単なる噂話なんだから」
風羽をなだめるように、明美が言った。
彼女は怖がっていない。
むしろ呆れていた。
唯一、怖がっているのが風羽だ。
今にも泣きだしてしまいそうな彼女を見て、成美は意地の悪い笑みを浮かべている。
「噂だなんて決めつけていいの?実際に一本足の黒猫を見たっていう書き込みがネットにされているのに。ちなみに夢にでてくる条件は話を聞いて怖がった人のところになんだよ」
「ばかばかしい。もう寝よ」
「明美って本当につまらないの」
「つまらなくて結構」
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