ブラックナイト

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どのぐらい寝ていないだろうか。 通話したまま、立ちあがる。 ふらつく身体を叱咤するも、よろける。 気を抜けば、すぐにでもまぶたがさがってきそうだった。 机の上に転がるエナジードリンク。 まだ中身が残っているものはないかと、一番手前にあった缶からゆする。 から、カラ、(から)。 空っぽばかりだ。 「買ってこないと」 「うん?」 「エナジードリンク」 「あー、エナジードリンク……」 「ねえ。明日、会わない?解決法を探そうよ」 成美からの返事はない。 「成美……解決法……」 果たしてそんなものはあるのだろうか。 猛烈な睡魔による限界状態で思う。 「ほんのすこしだけ」 そう言いわけをして明美はまぶたをとじる。 暗くなっていく視界の中で黒猫が、ツ、とよぎる。 黒猫は一本足だった。 ああ、これが。 頭の片隅でぼんやりとそう思う。 これからどうなるのかわからない。 だけどーー。 「私は夢から覚めてもいいですか?」 明美は一本足の黒猫に問いかける。 にゃあ、と一度だけ鳴いた。 【完】
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