ブラックナイト

4/15
前へ
/15ページ
次へ
三人全員が起きるころにはお昼近くになっていた。 朝食兼昼食にと並べられた料理ーーパンにオムレツ、卵スープを明美は順に口に運ぶ。 「成美ちゃんの言葉の通りだった」 ぽつりと風羽がこぼす。 彼女だけ料理に手をつけていない。 膝の上に置かれた握りこぶしは力がこもっているのか、赤くなっている。 どこか固い風羽の声に、二人は視線を彼女に向けた。 「一本足の黒猫、夢にでてきた。追いかけて。追いかけて。体感的にはすごく長く感じた。その中で成美ちゃんが教えてくれた逃げる方法で、ようやく解放されたの」 逃げる方法ーー一本足の黒猫の夢から覚めたかったら、追いかけながら一本足の黒猫に問いかけないといけない。 『私は夢から覚めてもいいですか?』と。 イエスなら二回、にゃあと鳴く。 一回だけならノーという意味。 まだ追わなければいけない。 ーー確かにそう成美は教えた。 「何回か猫に問いかけたの。なかなか二回鳴いてくれなくて。でもこうして起きることができて良かった」 風羽の唇がにぃっと吊りあがる。 かすかに痙攣しているそれを見て、明美たちは言い知れない怖さを覚えた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加