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三人全員が起きるころにはお昼近くになっていた。
朝食兼昼食にと並べられた料理ーーパンにオムレツ、卵スープを明美は順に口に運ぶ。
「成美ちゃんの言葉の通りだった」
ぽつりと風羽がこぼす。
彼女だけ料理に手をつけていない。
膝の上に置かれた握りこぶしは力がこもっているのか、赤くなっている。
どこか固い風羽の声に、二人は視線を彼女に向けた。
「一本足の黒猫、夢にでてきた。追いかけて。追いかけて。体感的にはすごく長く感じた。その中で成美ちゃんが教えてくれた逃げる方法で、ようやく解放されたの」
逃げる方法ーー一本足の黒猫の夢から覚めたかったら、追いかけながら一本足の黒猫に問いかけないといけない。
『私は夢から覚めてもいいですか?』と。
イエスなら二回、にゃあと鳴く。
一回だけならノーという意味。
まだ追わなければいけない。
ーー確かにそう成美は教えた。
「何回か猫に問いかけたの。なかなか二回鳴いてくれなくて。でもこうして起きることができて良かった」
風羽の唇がにぃっと吊りあがる。
かすかに痙攣しているそれを見て、明美たちは言い知れない怖さを覚えた。
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