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その日を境に風羽はやたらと一本足の黒猫の話をするようになった。
「とても器用に飛び跳ねるの」
「あまりにも差が開くとね、すこしは待っていてくれることもあるの」
風羽はそう話す。
それが毎日続く。
最初こそ面白半分に聞いていた成美だったが、次第に露骨にいやな顔をするようになっていた。
そんな二人を見かねた明美は、成美に問いかけることにした。
「ねえ。一本足の黒猫の話、本当のことなの?」
「明美までやめてよ。もうその話は聞きたくない」
「真面目に答えて。風羽は毎日見たって言ってくるんだよ?明らかにおかしいよ」
成美は一瞬だけ唇を尖らせてから、ため息をつく。
「結論から言えば、全部でたらめだよ。一本足の黒猫なんていないし、逃げる方法だって適当に言っただけ」
「呆れた。何でそんな嘘をついたわけ?」
「風羽が怖がるのが楽しかったし。でもここまでだなんて想定外」
「今からでも遅くないから、風羽に本当のことを教えてあげて」
「わかった。今日登校してきたら言う」
しかしその日、風羽は学校にこなかった。
その日だけではない。
二日、三日と経つもやはり登校してこない。
心配になった明美たちがスマホに連絡をいれても、応答なしだ。
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