4人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋はカーテンがしめっぱなしになっていた。
明かりはついているが、どこか陰鬱な空気が充満している気がしてならない。
「風羽、ちゃんと寝ているの?」
「寝たら一本足の黒猫がくるから」
ーーだから寝ないの。
風羽はそう言って目をこすった。
明美が成美の脇腹を肘でこづく。
「あのさ、一本足の黒猫の話。完全に嘘なの。でたらめもいいところ。だから実在しないんだよ。だって私の創作怪談なんだから」
成美が言いきると、風羽が小さく笑った。
「本当か嘘かなんて関係ないよ。一本足の黒猫は確かに存在しているんだから。見て」
風羽は右足のパジャマのズボンをまくしあげた。
あらわになった足首は赤紫に変色していた。
「五日ぐらい前かな。追いかけられなくて足を持っていかれそうになったの。ぎりぎりで問いかけることができたし、二回鳴いたから助かったけど」
「だから作り話なんだって!」
「いるの!だんだん追いかけるのがきつくなってきているの。速度がはんぱなくなっていて。次に遭ったら私……。ねえ!本当はまだ他にも対処法あるんでしょ?」
「知らなーー」
「教えて!何でもするから!教えてよ!」
最初のコメントを投稿しよう!