4人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日、明美が教室に入るやいなや成美がかけ寄ってきた。
その顔はひきつっている。
「昨夜、でたの」
それだけで、明美は察した。
「ちょっと待って。嘘話だったんでしょう?なんでそんな……」
「私もただの夢だと思っていたの。でもこれ」
成美はソックスをさげて右足首を見せる。
風羽と同じように赤紫に変色している。
「私が作った話だよ?だから追いかけなかったの。そうしたら一本足の黒猫が右足を狙ってきて……慌てて問いかけたの。二回鳴いて助かったけど、でも……でも!」
「落ち着いて」
早口でまくし立てる成美の両肩に手をやり、そっと身体を押し戻した。
成美は暗い表情を浮かべている。
「夢なのに現実味おびていて、右足に走る痛みは本物だった」
「成美ーー」
明美が言葉を続けようとしたとき、教室のドアがひらいた。
担任が入ってくる。
クラスメイトたちが各々、自分の席へと向かう。
成美はまだ何か言いたげだったが、明美から離れていった。
「今日は急遽、全校集会がひらかれる。廊下に並んで体育館に向かうように」
「何かあったんですか?」
誰かが明るい声で茶々をいれる。
笑い声の中、担任の顔は強ばったままだ。
「校長先生からも話しがあるが、そうだなーーおまえたちには前もって話しておこう。長富風羽が今朝、亡くなった」
「え」
明美は思わず声を漏らす。
それは成美も同じようだった。
彼女は顔面蒼白だ。
「ショッキングな話だが特殊な亡くなり方だったそうだ。事件の可能性もあるからーー」
明美の耳にはもう担任の言葉は入ってこなかった。
最初のコメントを投稿しよう!