ブラックナイト

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次の日、明美が教室に入るやいなや成美がかけ寄ってきた。 その顔はひきつっている。 「昨夜、でたの」 それだけで、明美は察した。 「ちょっと待って。嘘話だったんでしょう?なんでそんな……」 「私もただの夢だと思っていたの。でもこれ」 成美はソックスをさげて右足首を見せる。 風羽と同じように赤紫に変色している。 「私が作った話だよ?だから追いかけなかったの。そうしたら一本足の黒猫が右足を狙ってきて……慌てて問いかけたの。二回鳴いて助かったけど、でも……でも!」 「落ち着いて」 早口でまくし立てる成美の両肩に手をやり、そっと身体を押し戻した。 成美は暗い表情を浮かべている。 「夢なのに現実味おびていて、右足に走る痛みは本物だった」 「成美ーー」 明美が言葉を続けようとしたとき、教室のドアがひらいた。 担任が入ってくる。 クラスメイトたちが各々、自分の席へと向かう。 成美はまだ何か言いたげだったが、明美から離れていった。 「今日は急遽、全校集会がひらかれる。廊下に並んで体育館に向かうように」 「何かあったんですか?」 誰かが明るい声で茶々をいれる。 笑い声の中、担任の顔は強ばったままだ。 「校長先生からも話しがあるが、そうだなーーおまえたちには前もって話しておこう。長富(ながとみ)風羽が今朝、亡くなった」 「え」 明美は思わず声を漏らす。 それは成美も同じようだった。 彼女は顔面蒼白だ。 「ショッキングな話だが特殊な亡くなり方だったそうだ。事件の可能性もあるからーー」 明美の耳にはもう担任の言葉は入ってこなかった。
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