捨て箱

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 箱はガムテープが貼られたままだった。誰も気が付かなかったのだろうか。それとも怪しい物だからとベンチの下に隠したのか。その時箱から「ニャ〜」と小さな声が聞こえた。やっぱり猫だ。猫が入っているのだ。  だとしたら1日以上水も飲まずにいる事になる。凄く可哀想だ。でも私は飼えない。どうしようかと自転車を止め少し悩んだ。  飼えなくても箱から出してだけあげようか。そうすれば水くらい飲める。毎日公園に餌を持ってきてあげて公園で飼おうか。でも野良猫だと分かると保健所に連れて行かれてしまうだろう。  下手に情をかけないほうがいいのかもしれない。きちんと飼えないなら無責任な事はしない方がいい。そう思い、後ろ髪を引かれつつ、私は公園を出た。  次の日も猫の事を思い出してしまい仕事に集中出来なかった。もう忘れよう。私には縁のない猫なのだ。そう心に決め、しばらく公園は通らない事にした。ちょっと遠回りをし、公園の側を通らない道を選び家に向かった。  アパートに着き駐輪場に自転車を停めようとした時だった。  駐輪場に箱があった。いつも私が自転車を停めている場所にだ。私は怖くなり慌てて自転車を停め部屋へ行こうとした。すると「ニャ〜……」と、昨日よりも弱々しい声が聞こえてきた。
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