捨て箱

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 しばらく様子を見ていると震えは収まった。 「お腹空いた?」 「ニャ〜」  私は冷蔵庫からウインナーを出しレンジで温めて箱の前に置いた。箱はウインナーにがっついた。しかし熱かったのか「ニャー!」と後退りした。私がフーっと息を吹きかけ冷ましてから与えるとガツガツ食べ始めた。そして満足したのか、私にすり寄り寝息を立て始めた。  何だ、猫じゃなかったじゃないか。ならば悩む事はなかったのだ。これは箱だ。箱なら誰にも文句を言われず部屋に置いておく事ができる。 「ごめんね。もっと早くに拾ってあげれば良かったね」  そう言いながら喉を撫でてあげると箱はゴロゴロと喉を鳴らし始めた。可愛い。なんて可愛いのだ。  私はそっと箱を抱き上げ一緒に布団に入った。箱のぬくもりと寝息が心地よい。これは1人寂しく暮らしていた私への神様からのプレゼントに違いない。真面目に暮らしてきて良かった。そう思いながら私は眠りに就いた。 「と言うわけなんです。だからこれは箱です。猫じゃありません」 「何言ってるの。他の部屋から猫の鳴き声が聞こえるって苦情がきたのよ」 「じゃあ確認してください」  大家さんは段ボール箱を持ち上げると一気にガムテープを剥がした。 〈終〉  
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